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【コラム】「櫻井・有吉THE夜会」を終えて

熊川哲也さんが出演した「櫻井・有吉THE夜会」、楽しんでいただけましたか?
番組で紹介された『シンデレラ』のかぼちゃの馬車は、バレエのハイライト・シーンに登場する実物ですが、

かぼちゃの馬車

これがまた、舞台で見ると、さらにさらに美しいのです!
――仙女の魔法によりプリンセスの姿に変身したシンデレラは、鹿たちが引く馬車に乗り、お城に向かって出発。やがて舞台上は天空に変わり、駆けめぐる馬車の周りでは、仙女と「星」たちのコール・ド・バレエがシンデレラを導くように、見守るように、巧みに陣形を変えながら群舞を繰り広げる――。
ここでは、舞台でしか目撃できない! この馬車の名シーン誕生秘話をこっそりお教えしましょう。
シルバーのボディに、パールやラインストーンなど大小160近い装飾を施し、まばゆいばかりの輝きを放つこの馬車は、英国美術界の至宝と謳われた故ヨランダ・ソナベントさんがデザインしたもの。

シンデレラの馬車

姿かたちの神秘的な美しさ、豪華さだけでも一見の価値ありですが、実は制作時に熊川さんが究極のこだわりを持っていたのが、「舞台上を駆け回れる馬車に」ということでした。
というのも、世界中のバレエ団で『シンデレラ』は上演されていますが、その多くはシンデレラがお城に向かって出発するところだけを見せて第1幕が終わる、という演出になっています。

でも熊川さんの構想は、それとは違っていました。
最初に紹介したように、変身から出発、そしてお城到着までの壮大な“魔法”の光景を、舞台という限られた空間で展開したい! と考えたのです。
ここで製作チームのハードルは一気に上がることになりました。
そもそも画家としても名高かったソナベントさん(『シンデレラ』では衣裳デザインを担当)の描くデッサンは、 それ自体がすでにアート。
細部を描き込まない、いわば“イメージ”の世界なので製作チームは、それをどう読み解き、立体化するのか、つねに力量を試されてきました。
しかも今回は、形にするだけではダメ。シンデレラを乗せて舞台をぐるぐると駆け回るためには確実に、安全に、走行できる性能を備えたものにしなければならない……となると、これはもう、一台のクルマ(エンジンこそないけれど)をイチから作り上げるような精密な作業でした。製作チームはまず、実物の1/10サイズの模型作りに乗り出しました。

馬車デッサン

デッサンを基にフォルムや装飾を決めていくまではいいとして、一番の難関はやはり車体のバランスをどう取るか、だったとスタッフは振り返ります。
4人の馬車引きがアームを持ち上げた時の状態も考慮しながら前輪と後輪の位置や大きさを何度も修正し、さらに「いかようにも小回りが利くように」と約1か月の試行錯誤を繰り返しながら、その構造を作り上げていったのです。
そこまでの完成度を目指した理由はほかでもありません。
芸術監督が頭の中でイメージしていることを、確実に実現できるように。
そして新たな発想が生まれた時にも、その可能性を閉ざさないように。
結果、完成した模型は熊川さんをうならせる出来栄えとなりました。それでも、舞台に実物の馬車を乗せ、走らせてみないことには、本当にうまくいくのかは誰にもわかりませんでした。
なぜならアーム部から車体までの全長は約5メートル。
大きさからして本当に一台のクルマをステージ上で走らせるようなものだったからです。
熊川さんも、この馬車のシーンだけは「初日を迎えるまで不安もあった」、とのちに明かしています。

初日目前の舞台稽古の日、初めて実物の馬車が舞台に乗りました。
スタッフ、ダンサーが一丸となって、最も美しく効果的に見える「走り」を何度も試していきます。
指示を出す熊川さんは、もちろん真剣そのものながら、素敵なおもちゃを手に入れた少年のように楽しそうでもありました♪
シンデレラを乗せた馬車が円を描くように滑らかな走りを見せるだけでもワクワクしますが、「名シーン」といわれる理由はもちろんそれだけではありません!
馬車が駆けるのと連動して、10数名の生身のダンサーたちが美しい星空を形作る、その絶妙な調和――
それには、馬車を引く鹿たちも、星たちも、その一人ひとりが互いの軌道を意識し合いながら、細心の注意を払って役割を果たさなければなりません。
熊川さんが頭の中で思い描いていた、どの『シンデレラ』とも違う壮大なこのシーンは、まさにスタッフ、ダンサーが総力を結集してこそ、現実のものとなったのです。
その光景の美しさたるや息をのむほどで、これぞまさしくリアルな夢の世界。
実際、シンデレラがお城に到着し、幕が降りたとたんに、夢見心地の客席から感嘆のざわめきが起こるほど。
さらに、この場面ではひとりで馬車に乗っていたシンデレラが、ラストシーンでは王子とふたり、幸福いっぱいにこの馬車でお城へと向かいます。このコントラストがまたとても感動的!

王子とシンデレラ

馬車が舞台を駆けめぐる圧巻のシーンを、劇場で目撃しにぜひいらしてください♪
お待ちしております!

[ライター・遠藤キヨ子]